『 かごには様々の魅力がある。かたち、素材、模様、用途、触感、喚起されるイメージ等々。 作り続けてきて、私が一番魅かれたのは構造そのものだった。 編むことそのものに集中した結果、かごの形は用途から離れたものになった。 』
窓から見える一本の樹が、このところ作品の素材を提供してくれている。「一本の樹からのバスケタリー」というシリーズになった。この楮(コウゾ)の木は生命力が旺盛で、すぐに隣家との境界を越えてしまう。かなり思い切って剪定しておいても、夏になってから必要に迫られて度々伐ることになる。葉が茂る前に、太くて長い枝を一本伐ってしまうことにした。 楮は紙の材料だから、皮をはいだり、叩いたり、水に漬けておいたりすると、樹皮から縄、そして紙に近いものにまで変化する。せっかくの一本ものなので切断せず連続した状態でやってみた。長いままの状況がわかるようにビデオに記録しておいた。これは、それをただ折りたたんだだけの作品である。